丈夫な腸をつくるために

栄養学だけで健康は語れない理由

栄養学だけでは腸は丈夫にならない 栄養と健康を知るには、まず腸と腸内細菌の関係を知らなければならない。
その関係をとりもっているのが、食物繊維である。「第6の栄養素」と呼ばれてそう古くはないが、丈夫な腸をつくりあげる栄養素となる。
これまでの栄養学に食物繊維を加えて腸の機能を理解する事が望ましいと考える。
日本の標準栄養素の摂取基準は全摂取に占める糖質量は60%となっているが、この糖質量を線維、難消化デンプン、オリゴ糖を主体に総量25%くらいに減量すると健康な人の数が増えるという情報が多くなっている。実際に臨床上、好結果を出している医療機関を参考にすべきである。
また、カロリーと健康の整合性が無く、スイスではカロリーによる健康指導は中止しているようだ。

ビタミンを摂りすぎると腸はかえって弱くなる ビタミンは摂取量を栄養所要量で決められた量より減らしたほうが、腸内細菌叢ではビフィズス菌などが増えて安定した状態になるそうである。
人間は体外から補充しているビタミンCやEやAなど摂取するのが良いが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」ということもあるようだ。

高齢でもタンパク質摂取は必要だが、腸でもタンパク質が作られている タンパク質は人間の体内ではつくられない最も大切なものである。しかし、タンパク質を必要とするのは13~14歳で、一般的に男子は1日90グラム、女子は75グラム程度でいいようである。加えて、大人になったら1日60~70グラムで十分という意見やもっと減らしても構わないという見解もある。それは、腸内細菌が腸内にあるタンパク質(毎日剥がれる腸皮、酵素タンパクなど)で1日80グラム程度リサイクルタンパク質を製造しているためである。これらを知らずに毎日多く摂るとタンパク質過剰で発ガン注意である。難消化多糖類の増量と砂糖減量とある程度のタンパク脂肪食の摂取で元気に長生きしたいものだ。要はバランスということである。

 

人間は腸から健康になる

腸内細菌のバランスが良いとコレステロールの吸収も抑えられる 腸内のビフィズス菌や、バクテロイデス・クロストリジウムなどの嫌気性細菌は炭水化物や食物繊維を発酵させて発酵産物をつくるが、その1つにプロピオン酸がある。これはコレステロールを抑えたり、脂質との合成を抑えたりする働きをする。
コレステロールを下げるデンプン、つまり米飯を摂ることも大切である。タンパク質のもとの肉、乳製品、大豆などでも適度に摂ると消化吸収がよく、悪質なものができにくい。
カルシウムの吸収が良くなる 腸内細菌による発酵状態が良いときにつくられる物質のプロピオン酸・酢酸がカルシウムの吸収を促進する。発酵で生じる酸が小魚の骨もイオン化して吸収率が良くなるわけだ。ごはんや繊維を食べて腸内を発酵させると、カルシウムもどんどん吸収されて骨粗しょう症の心配も減ることとなる。障害がでるカルシウム不足は補給が必要だが、良好な腸内発酵を保ち吸収効果を上げることが大切である

 

常在菌の変わりようで腸も悪くなる

病気になると常在菌も変わる 病気などの体調の変化により普段は影をひそめている細菌が活躍を始めることがあり、これらは少々やっかいである。
腹痛などを起こす大腸菌やウェルシュ菌などが代表的。
発熱などにより消化器が生理的に変化して、腸内細菌の増殖コントロールがうまくいかなくなり、ある種の腸内毒素が増加することもあって下痢などの症状を引き起こすことがある。

ストレスがあると常在菌も変わる 腸がストレスによって不調になる場合、常在菌に変化が現れ下痢を訴える。
例えば「行くのがイヤだな」と思う通学や通勤時などにこういった症状が出るのだ。
恐怖を感じる人の常在菌は日和見菌(ひよりみきん)のある菌が異常に増えたり、ウェルシュ菌が増えたりすることがあり、70代の老人の細菌叢に似てくるという不思議なことがあるそうだ。

抗生物質は人間にとって「良い菌」に効きやすい
抗生物質は怖い病原菌を退治してくれるが、人間にとって良い菌まで殺してしまうのが難しいところだ。
染色法で青く染まるのはグラム陽性菌で、ビフィズス菌などの良い菌。一方、赤く染まるのがグラム陰性菌で、悪さをする菌が多い。困ったことに抗生物質はグラム陽性菌に効いてしまうので、良い菌が減少してしまう。抗生物質を飲むときには強くて良い菌を一緒に飲むと良いだろう。
ただ偏って特定の菌を摂取し続けることは、常在菌のネットワークを崩すこともあるので注意が必要である。

絶食は常在菌叢を良くする効果がある
絶食をすると常在菌にえさが届かないのでつらい環境になる。しかし、今まで優勢だった悪い菌を減退させるには好都合。それは腸にとって良い菌を増やす機会となるからである。
また、「宿便」もとれ、長年の老廃物も一掃することが可能だが、素人判断でしないことが大切。
健康になるため、一時的に不健康な事をする。逆も真なりである。
日頃、腸の具合で悩む人が断食することで、調子が良くなるのもこのようなことと関係する。

 

常在菌に力をつける食べ物

常在菌の種類も豊富な和食
日本食は常在菌を理想的に保ってくれる。農耕民族である日本人の食べ物は米、イモ、野菜、豆類、果物と植物性のものが中心で、動物性は魚から摂っていた。
すなわち、日本食は高炭水化物・高繊維で良い菌の増殖献立なのである。一方、高タンパク・高脂肪の西洋食は悪い菌の増殖献立であると言えるだろう。

常在菌によって便の色と臭いが違う ビフィズス菌の多い人は便が黄色っぽい色をしている。水分が多く形がないのは大腸の水分の吸収機能が低下しているため。水に浮くのはガスを含んでいて脂肪が多いためである。
臭いについてだが、臭う原因はインドールやスカトールなどの物質、またはタンパク質や粘液が腐敗してつくられた硫化水素を含んでいるので臭うのである。
一般的にいい便とは、臭わず、黄色に近く、ずっしり沈み、1日バナナ2本くらいの量と言われている。

オリゴ糖だけでは安心していられない オリゴ糖の利点として、腸の中が発酵状態になり血流が良くなることや、便秘やストレスで悪くなった腸血流を改善し、栄養吸収が良くなることなどが上げられる。しかし、オリゴ糖がビフィズス菌を増やしウェルシュ菌を減らしてくれるなら、人間にとって「救世主」だろうが、必ずしも完璧ではないようだ。
最近オリゴ糖が便秘を解消するというフレーズが多く愛用者も多い。しかし、オリゴ糖に偏ればオリゴ糖を餌にする菌が繁殖しすぎて常在菌叢のバランスが崩れてしまい下痢を導く。腸を丈夫にできない一因となることもある。

ヨーグルトは腸を整えてくれる発酵食品 ヨーグルト菌は腸の中を通過するだけで定着はしないが、牛乳を発酵してつくったヨーグルトは菌による腸内発酵など常在菌に良い影響を与える。
ヨーグルト菌がどのくらい腸に届くかはわからない。
安価で毎日補食するには、種菌を購入して自宅で手づくりすると新鮮で安くて良いのではないだろうか。
納豆とぬかみそ漬けは日本のヨーグルト 日本人の腸と健康を守ってきた代表食品といえるのが、この2つ。納豆菌やぬかみその乳酸菌は腸には留まらないが、腸内の腐敗を抑え、酸性に保つ働きをしてくれる。納豆の粘りに含まれている多糖体はウェルシュ菌を抑える力があり、ビヒィズス菌も多糖体を利用して代謝する。すなわち納豆菌はビフィズス菌も増やす効果があるのである。大豆の中にはオリゴ糖が含まれているので、さらに腸に良いのである。

酵母という「発酵の母」の存在
発酵力が落ちている常在菌叢の助け舟の救世主は酵母である。酵母は人類が食文化にずっと取り入れてきた発酵の母、酵素の母、栄養の母なのである。
酵母は胃腸薬、栄養補助食として使用されてきた。酵母はビタミンも豊富なので細菌を育てるための成分として酵母エキスが重宝されている。
特に乳酸菌や空気を嫌う菌など、栄養の要求が強い細菌にとってはとても重宝な成分となっている。
常在菌にとって救世主的な相性の合う酵母の支援を受けながら増殖発酵ができる。
そしてとてもクリーンでとても強い腸を作っているのである。
酵母とは胃酸の影響も受けることなく、腸内で活動できる強い菌なのである。


参考文献/腸内細菌情報オフィス主宰
森下芳行著「腸内革命」「ママのおなかエコロジー」より・一部改変